空き地

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「平ヶ丘高校に行きたいんです」 三年生になってすぐ行われた三者面談でそう告げた時、先生は顔を輝かせて賛同してくれた。 「田中さんならきっと受かるわよ!すごい、うちのクラスから平ヶ丘生が出るなんて、先生鼻が高いわ」 横目でうかがうと、ベージュのスーツに身を包んだお母さんも私を見ていた。普段は塗らないアプリコットの口紅が期待を込めた形に笑む。 平ヶ丘を検討している事は一年生の頃から言ってあった。 友達や周りには二年生に上がって受験の話題が多くなった頃、雑談中不意に聞かれた時に初めて答えた。 「平ヶ丘、受けようと思ってるんだ」と口にすると、わっと盛り上がって次々に手をとられた。 「すごいじゃん!愛理なら絶対いけるよ!」 「知らなかった、がんばって!」 あまりの盛り上がりように普段話さない人や男子にまで知れ渡り、それ以来受験の話になる度に教室中から激励された。 「田中、すごいよなー。過去問見せてみ?うわ、数学も国語も俺らのとは比べ物になんねーわ!」 「カッコイイよねー。がんばってね!」 応援の言葉の数々はくすぐったかったけど嬉しかったし、もらう度にモチベーションがアップするのを感じていた。「ありがとう。がんばるね」と答えながら、私はますます受験勉強に打ち込んだ。
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