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やって来たのが他に何もないこの空き地の、桜の木の下。
背中伝いにずるずるとしゃがみこむと、私はそこで体育座りの姿勢になった。
あれから一年も経ったのに、未だに悔しさは消えない。
こうして、嫌になるくらい鮮明に思い返せてしまう。
人一倍努力した。お母さんを喜ばせたかった。この制服で電車に乗って、颯爽と歩いてみたかった。
視界がぐにゃりと歪み、滲む。両目の縁で盛り上がった熱い液体が、すぐさまあふれて流れ落ちた。次から次へとあふれ出して止まらない。
満開の桜があるものの、それ以外はただの空き地だ。ここからもう少し歩いたところには桜並木の遊歩道があり、桜目当ての人は大体そちらに行く。
一本だけの桜を見に来る物好きなんてそうそういないだろう。隠すことなく、私は泣き続けた。
「……どうしたの?」
不意に聞こえた声に、思わず肩が跳ねる。
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