出会い

2/10
前へ
/38ページ
次へ
やって来たのが他に何もないこの空き地の、桜の木の下。 背中伝いにずるずるとしゃがみこむと、私はそこで体育座りの姿勢になった。 あれから一年も経ったのに、未だに悔しさは消えない。 こうして、嫌になるくらい鮮明に思い返せてしまう。 人一倍努力した。お母さんを喜ばせたかった。この制服で電車に乗って、颯爽と歩いてみたかった。 視界がぐにゃりと歪み、滲む。両目の縁で盛り上がった熱い液体が、すぐさまあふれて流れ落ちた。次から次へとあふれ出して止まらない。 満開の桜があるものの、それ以外はただの空き地だ。ここからもう少し歩いたところには桜並木の遊歩道があり、桜目当ての人は大体そちらに行く。 一本だけの桜を見に来る物好きなんてそうそういないだろう。隠すことなく、私は泣き続けた。 「……どうしたの?」 不意に聞こえた声に、思わず肩が跳ねる。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加