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「おまえのパパを愛してた。その気持ちを体に刻もうとこの薔薇を彫ったんだ。
これ彫り込んだ時、おれはもう余命半年ぐらいだったけど。
生きてきた証を自分の体に刻みたかった。メモリアルだな。
俺が絵を描くのは理屈じゃなかった。
何かに突き動かされて、気付いたらどでかいキャンバスが塗りつぶされて。
そこは宇宙かはたまた地球のコアか。
闇の中に瞬く光を描きたくて、頭真っ白にして書き殴ってた。
この入れ墨は明らかにそれとは違う。
俺は死んでも東海林晴馬を愛した記憶を失いたくはなかったんだ。
だから刻んだ。
火葬場で体が焼かれてこの世界では灰になったが、それでも消えなかった。
俺にとって晴馬は、たったひとつの希望の光に見えた。
それが愛というものだと、おまえのママが教えてくれた」
田丸燿平さんは真剣な顔をしてそう話した。
そして、
「いいか、恵鈴。
シンボルは誰のために生まれたかを視ろ。
それを象徴とした者たちがどんな希望を夢見たのかを視ろ。
手掛かりは建物、その中に貯め込まれた膨大な記録と、人々の残留思念……。
お前には夏鈴から分け与えられた波戸崎の血が流れている。
連中は純血に拘ったきちがいだ。
お前の血は混血で論外だと切り捨てた。
血に力があるのには理由がある。
そこから先は、自分で調べろ。
そして、お前のママを助けてやれ。
大丈夫だ、お前ならできる。
お前はパートナーがいるんだから、な」
田丸燿平さんはそう言うと、腰に手をあてて格好つけながら消えて行った。
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