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「燿馬。あの人たちの中に、ママみたいな人がいるんじゃない?」
そうとしか思えない。
「俺もそれ、考えてた。おふくろに脅迫メールが来たんだ。
娘を返して欲しければ、波戸崎の娘、お前ひとりで来いって……」
燿馬は自分の携帯端末を取り出して、ママから転送されたそのメールを私にも見せてくれた。
「白鷺の電話番号を、お前のアトリエの机に放置されてた名刺から解読したのはお袋だ。何かの探偵小説みたいな展開だけど、敵はお袋の能力なら自分たちのところに自力で辿り着けるってわかってたみたいな気がするんだよ」
「……ぇえ? ……なんかそれ……、まるでママのことをテストしてるみたい」
私の言葉に燿馬は頷いた。
「それ、俺もそう思った」
たっぷり三十分は待たされて、ようやく来たのはかなり年配のおじさんだった。物腰がスマートでまじめそうな顔つきをしていて、とても姿勢が良い。私たちの前に座ると、「どうしましたか?」と聞いてきた。
燿馬はまず、私が誘拐されたところから話始めた。時系列を追って経緯を説明し、両親も拉致監禁されているかもしれないと訴えた。
「あそこは私有地で、所有しているのはかなりの資産家だよ。私設の美術館だって聞いているけど、拉致とか監禁とか考え過ぎじゃない?酷いことされたわけじゃないみたいだし」
「酷いことされないと警察は信じてくれないんですか?」
私は思わず大声をあげていた。
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