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「パーティー?」と、心の中で何度も繰り返す。
ママもパパももしかしたら、そのパーティ―に強制的に参加させられる?
そう思ったら、私は。
「……歩いて下さい。拒めば気絶させて運びますが、それはおすすめしません。次に目が覚めたとき、自分がドレスに変身してたとしたら気持ち悪いでしょう? 僕はこれでも紳士のプライドがあるので、君に変な誤解を与えたくはないんです」
まだ口を塞がれながらも、彼の言うことは信用するに足りている気がして。私は頷いた。
男性警官はいつの間にか女性警官と並んで立ってた。女性警官は困惑した顔で、私を観ている。なぜ、燿馬がいないのか何となく想像が出来た。
私達は彼らに騙された……。
「彼らを恨まないであげて。僕らの都合に巻き込まれた被害者達なんですから」
二の腕をぐっと握られ、引きずられるように歩き出す。
私は彼らの横を無言で通り過ぎた。
男性警官は俯いて目を閉じ、女性警官はもの言いたげに視線を交わらせたけれど、最後まで無言だった。
「……警察まで抱き込むなんて、すごいんですね」
皮肉のつもりで言うと、梅田原は「お褒めの言葉としてありがたく頂戴しておきますね」と嫌味のように言うと、爽やかに微笑んだ。
またしても同じ入り口から廊下に入り、例の四面の間にやってくると、再び薔薇の扉を開けて中に入っていく。突き当たりのドアを潜り抜け、すぐにドアに鍵をかけられた。昨日居たはずの初老の男性はいない。
部屋の奥にあるドアを開けて連れ込まれてみると、ホテルの客室のような部屋が並ぶ廊下に出た。
どういう造りなのかわけがわからない。
「昨日、ここにいた男は僕の父だ。先祖代々、この教団を運営してきたのは僕らの一族だ。えっと、君はどこまで知ってるのかな?」
そう言いながら、梅田原は五つある扉の真ん中のドアを開けた。
「クローゼットにドレスがあります。恐らく、お兄さんもご両親も今夜のパーティーで顔を揃えられるはず。それまで少しだけ時間がある。僕の話が聞きたいですか?」
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