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「あの、ところで。何のパーティーなんですか?」
質問を変えてみることにした。
「年に一度、大事な会議の前に親睦と繁栄を祝うパーティーをするって聞いてるけど」
―――大事な会議?
どんな会議だろう……。
「すみれさん。その会議って、どんなことを話し合うんですか? 詳しく教えて下さい」
真剣な目を向けてお願いすると、彼女は得意げに話し始めた。
「協会の活動報告と経営状況について意見交換するの。
品質が落ちるようなことになれば信用は地に落ちてしまうでしょう?
梅田原家は一番大事な仕事を、もう何百年もの間司ってきたんですって。
あとね、凱彦さんが今回から議長を務めるの。私すごく楽しみで……うふふ」
婚約者の活躍を期待しているみたいだけど、何がそんなに嬉しいのかわからない。
「それにね。今回は巫女の継承者を決めるのよ。
波戸崎家は三年前に同時に二人の後継者候補を亡くしてるから、
誰を連れてくるつもりなのかしらね」
巫女の………継承者?
それに、三年前に同時に二人が亡くなってるなんて―――
―――デジャブする。
お爺ちゃんとみっちゃんが同時に亡くなったのは、偶然じゃないの?
ゾクゾクと寒気を覚える。
―――すみれさんは、私が波戸崎家の末裔だとは思ってもみないのかな。
彼女はうっとりと大きな婚約指輪を見つめては、うっとりとため息を吐いた。
「すみれさんも、もしかして夢見の預言で?」
思いつきだったけれど、当たりらしい。
「彼が千歳様の夢見で、婚姻する相手を預言されたそうなのよ。慶応大学を出てすぐに、芸術大学に入学したのは、私に出会うためだったって……」
ものすごく嬉しそうに、でも恥じらうように馴れ初めを語る彼女を止められそうになくて、私は終わるまでただ辛抱強く耳を傾けた。
単純に就職したくなかったんじゃないかなんてことが頭をよぎったけれど、幸せそうな彼女に水を差すつもりはなくて、ただ頷いて聞いていた。
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