第三章 白い龍と黒い龍

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 白いドレスを着て、髪の毛はなぜか肩まで切っていて、本当に別人のように見えてしまうのは、笑顔がないせいだ。 「夏鈴!!」  親父の叫びにも反応しない。  人形のようにただじっとこちらを見て立っているだけ……。 「なにされたんだよ!!ちくしょぉぉ!おまえ……!」  すぐ傍に居る龍の肩を掴もうとした親父に、一歩早く手を回していた龍が何かを親父の肩に突き立てた。細いペンのような注射器だ。驚いた顔をしていた親父が、突然目を開けたままバタリと床に崩れ落ちた。それを、黒服が掴み上げて引き摺って連れて行こうとしている。 「おやじ!! てめぇ、何しやがったんだよ!!この野郎!!」  身動き取れない俺は、ただバカのひとつ覚えみたいに叫ぶしか出来ない。こうなったら誰でも良いから、こんな非人道的な行為を許さないでくれ!そんな願いを込めて、俺は見境なく助けを求めた。 「誰かぁぁ!!誰でもいい!! 助けてくれ!!」  ―――でも、誰一人反応しない。  みんな人形みたいに大人しくただ、そこにいる。  お袋と同様に、魂の抜けた者たちが異様に着飾ったまま静止していた。 「おやおや、もうすぐ成人する男の子が簡単に泣いちゃ駄目でしょ?」  龍がニタニタと笑いながら俺の前にやってきた。親父は黒服に連れて行かれてしまって、もう姿が見えない。 「君はかなりの臆病者だね? 臆病者の匂いがする。懐かしいなぁ。この匂い……」  情けないが、俺は震えて身構えるしかできなくなっている。手を出せば、その手を掴まれて腕の付け根ごと千切られそうな狂気を、この男から感じているせいだ。 「その子、君の可愛い妹も美味しそうだなぁ。君たちがただならぬ関係ってことは、一目でわかるよ。双子の兄妹でセックスしてるなんて、血は争えないよね?」
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