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シャワーを捻り、体も口の中も隅々まで洗い流してみても、穢れたのは体だけじゃない気がして、絶望的な気分を味わった。その間も無神経な男がドアを叩いて勝手に私の名前を呼んでいる……。
肌が赤くすりむけそうになるほど力いっぱい洗い落とそうとしながら、不安定に溢れ出る慟哭に自分が今どこにいて何をしているのかも、わからなくなりそうで。
「はるまぁぁぁぁぁぁぁ」
今すぐ縋りつきたい彼を想いながら、同時にどんな顔をして会えるのかと自分を責めてしまう。
酷い、ひどい、ひどい!!!
―――どうしてこんなこと!!
「かりんさん?」
「呼ばないで!!」
苛立ちがピークに達して、私はドアに怒鳴りつけた。声が枯れている。
「……今はショックなのはわかります。
だから、あなたが落ち着くまでぼくは待ちます。気が済んだら、出てきて下さいね。出口はここしかないけど」
カチンとくる言い方。
「二度とあなたの顔なんか、見たくない!!あっちへ行って!!」
ドアに向かって石鹸やシャンプーのボトルを投げつけたら、静かになった。
それから私は何十分も動けなかった。バスタブに溜まっていく湯の中に没して、このまま死んでしまいたいとさえ思う。いつだったか、誰かが言っていた。レイプは魂の殺人だと。その意味を今、これ以上ないほどはっきりと感じている。
私は、殺された………
そう思った途端。
晴馬のことを想って、彼との幸せな日々を思い出して、泣いた。
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