第四章 秘伝の能力の秘密

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 本気で死ぬと思った。其れぐらい、ヤバかった。 「っくそ。あのガキ、次に会ったら絞めてやる。いや、あのスタンガンで同じ痛みを味合わせてやる」  冷たい床を感じながら、夏鈴のことが気掛かりで立ち上がろうとする。でも、筋肉ががくがくして不安定この上ない。 「これしきのことでぇぇぇ」と、気合を込めて立ち上がり辺りを見た。  俺は目を疑った。  どうみても洞窟―――。  自分が今、どこにいるのかわからないというはなんて心許ないのだろう。床はなぜかまっ平で、人工タイルが貼られている左官工事が成せる技が光っていた。凸凹していない。でも、壁と良い天井と良い、薄暗い中ながらも岩をくりぬいたような手彫りの洞窟。鍾乳石も若干ぶら下がっていて、空気は湿って風はない。匂いもない。 「……なんだここは……」  岩肌に設置されたドアは違和感しかない。どうやって嵌め込んだのかと、じっくりと良く見ようにも明りが足りない。この薄明かりはどこから来るのかと、俺は動ける範囲で調べた。  ドアの上部に設置されている正方形の四角い窓に、格子が嵌められていた。  電気ショックが怖くて、指先でちょんと触ってから何も起きないことを確信して、額をおしつけて目を剥いて外を眺めようとしたが、暗すぎて何も見えない。 「…なんだよ、牢屋みたいな部屋だな」  自分で言ってみてゾッとする。こんな時代錯誤的なものに今、俺は放り込まれているのだ。  ―――なんでこんな目に遭うんだ? あのガキ、俺をどうするつもりだ? 「隙間、探そ」  わからないことを考えてもしょうがない。ドアが嵌め込まれた場所に隙間がないか、指先を這わせて確認していくと、案の定隙間らしきわずかな風の動きを感じた。
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