第四章 秘伝の能力の秘密

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 着の身着のままなため、ジャケットと内ポケットに何かないかとまさぐると、名刺入れが手に触れた。一枚抜き出し、隙間に刺すとやはり抜けていきそうな感触。丁度膝の高さなため、数歩離れた位置から後ろ踵蹴りをしてみた。  ガッガッガッ  やたらと音が反響して、気持ちが悪い。 「っく。ダメか……」  これ以上やると歩けなくなりそうなため、一旦やめて壁に凭れかかる。閉塞的な空間はどんなに広くても、やはり閉塞感は感じるものだ。生き埋めになったような気分がしてきて、だんだんと嫌な汗が出てくる。 「おーーーい!!誰かぁぁぁぁ!!」  叫んでみたものの、反応はゼロ。  グワングワンと響いて跳ね返る音に酔ってきたような気がして、叫ぶのもやめて落ち着くためにどっかりと胡坐をかいて座った。  パニックになってる暇なんてないんだ。  夏鈴を探し出して、ここを逃げ出さなければ。あんな頭のイカレタ奴のところにいたら、ろくなことなんてない。今だって何されているかわかったもんじゃない。思えば夏鈴はどんな窮地も自力で凌いだ実績がある。可愛らしい見た目によらず、いざという時のあいつは俺よりも頼もしい……。  だから、今回も、どうか無事でいてくれ!  そんなことを願うしかできない自分が歯がゆくて、イライラする。  どれぐらいの時間が経ったのかもわからないし、外が見えないと夜なのか昼なのかさえも判断がつかない。最悪だ。  外につまみ出すんでもなく、今すぐ殺すわけでもなく、こうして閉じ込めているっていうのはどんな魂胆があるんだろうか? こんな時、夏鈴や恵鈴みたいに霊でも妖精でも妖怪でも良いから、何かの力があれば対処のしようがあるのかもしれない、なんてことを思っていた。すると、ガチャンという音がどこかから聞こえてきた。
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