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「そもそも、そんな力は必要なんでしょうかね?」
「それ、俺も思います」
「そうですか! 良かった。ここに長く居るとね、自分の方が変わり者のように感じられてきてしまうんです。
今日、集まっている連中は教団設立から関わっている偉い資産家の会合みたいなものなんですがね。波戸崎家に限らず、教団に関係している家々ではここ数年間災いが多発しているとか……」
彼が言わんとしていることがなんとなくわかってしまった。
「彼らは皆揃いも揃って、波戸崎家の呪いが漏れているって……」
「漏れている?」
―――どういう意味だ?
「いくら聞いてもね、この私の脳みそでは理解できないんですよ。だけど、集団ヒステリーとか、洗脳とか、胡散臭い連中と関わるとろくなことがないとか、その類じゃないかなって思ってるんです……。ここだけの話にしておいてくださいね。バレると怖いお仕置きされそうで……」
心なしか彼の顔色が青白くなった気がした。
「そろそろ時間です。ゲスト用の控室に案内するように言われてるので、移動しましょう」
宇都宮さんは立ち上がり、自分のネクタイを締め直した。俺もそれに習って、ネクタイを整え、袖を下ろしボタンを嵌め、ジャケットを羽織り背筋を伸ばす。
「何が起きても、あなたは奥さんを連れ戻してここを離れて下さい。頼みますよ」
「わかってます」
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