第一章 コレクター

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 お袋と真央さんが会うまでは、親父はかなり神経をすり減らしていた。  何も語らずとも全て視えてしまうお袋は、真央さんにかなり嫉妬心を抱いて自分でも持て余していたと後日語ってくれたが、あれから一年の間に女同士での交流も続けているみたいで、知らない間に親父そっちのけで仲良くなっているそうだ。  だけどその歳の差は16歳。お袋の母親・美鈴ちゃんと3歳しか違わない。母親に近い存在かもしれない、とお袋が言っていた。  美鈴ちゃん世代の女性は、閉鎖的な男尊女卑の中において権力にかしずくようでいて、実は底知れないエネルギーを沢山詰め込んだ開拓者魂の人々が多いのだという。だから、美鈴ちゃんはまるで突然電池の寿命が来たみたいに、ぽっくりと死んでしまった。魂の電池切れみたいなものだろうと、お袋は後日談で教えてくれた。 「ここからは何となくだけど、安曇野ICから降りれば良いのかなって気がしてるんだけどね」 「根拠は?」 「ないわ。でも、私の頭の中にいる水先案内人が言うには、そっち方向で間違いないって言うのよ」 「その案内人て誰?」  俺は美鈴ちゃんのような気がしてしょうがながなかったが、なぜかお袋は言い渋った。 「誰ってことはないのよ。なんて言ったら言いのかわからないけど、波戸崎家の歴史を知る存在とも言えるかな」  お袋は珍しいぐらい歯切れの悪い言い方をした。
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