第一章 コレクター

46/52

616人が本棚に入れています
本棚に追加
/352ページ
 誰が何のためにこんな大胆なことをしてまで、お袋を呼び出しているのか、俺にはさっぱりわからないけど、恵鈴を誘拐する大胆さからかなりヤバイ相手だということは明白だ。 「なぁ、お袋。なんで今頃、お袋にどんな用があってわざわざ娘をさらってまで一人で来いだなんて。警察を頼っても良いんじゃない?」  味方が多い方が良い。単純に俺はそう思っただけだが、良いながら警察になんて言えば良いのか確かに難しい問題だな、とすぐに思い直す。 「時間を長引かせたくないわ。恵鈴をすぐに連れ戻すのが最優先よ。  宗教の教団って常識が通用しないの。自分達の思想に染まった支配しやすい下っぱに手を汚れさせるのを何とも思ってないんだわ。  白鷺という男と、梅田原という若い男。たぶん、どちらも教団の深層部に関係していると感じるのよね。特に梅田原って名前は要注意って聞いているわ」  確かに、梅田原という男は服装からしてもかなり変人な臭いがした。呉さんが見せてくれた画像は本当に役に立つ。 「…下っぱって、洗脳されてるのかな?」 「されてるでしょうね」 「恵鈴はひどいことされてないかな?」 「今はまだ大丈夫みたい。でも、相手はコレクターならかなり際どいわ。ボヤボヤできない」 「コレクター?」  俺は混乱した。  そう言えば、宗教と絵にどんな繋がりがあるんだろう?  お袋狙いの教団は、どうやって行方を眩ました曾祖父達、つまり子孫である俺達を探し出せたか? 「何らかのこだわりに固執して、自分のコレクションを増やすのが生き甲斐な人がいる。画商を使って恵鈴に接触してきた人物は、田丸燿平の絵も所有してるみたい」 「それって、絵のコレクターってことなの?」 「そうね。絵と波戸崎の血を次ぐ者が正解かな。さっきから途切れとぎれだけど、チラつくのよ」 お袋は両目を閉じた。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

616人が本棚に入れています
本棚に追加