第一章 コレクター

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 私の体がまるで発光してるみたいで、足を出す場所がちゃんと見える。ピーターパンに出てくる妖精みたいに、私自身が光っている。 「お爺ちゃん!私、見つかっちゃう?」 「大丈夫だよ。誰からもその光は見えないから」 「夏鈴にだけは視えるけどね。好都合よ」  お爺ちゃんとみっちゃんは代わる代わる不思議なことを言った。 「みっちゃん達が何かしたの?」  二人とも笑って首を振った。 「そんな不思議な力は残念ながら出せないわ。その光はあなた自身の力よ、恵鈴」 「私の力?」 「恵鈴の絵にも光が滲み出ているのよ。だから、皆あなたの絵に惹き付けられてしまう。観るだけで他人の心を明るくするなんて、素晴らしい才能よ」  みっちゃんは艶やかな白い肌で、生前最後に見た時より若々しくて綺麗で、澄んだ声も私を勇気づけてくれる。  いま、私は独りじゃない! 「早く夏鈴に見つけてもらいましょう。がんばれ!恵鈴!」 「うん!頑張る!」  涙で濡れた頬をカーディガンの袖で拭きながら、山道を進んだ。  燿馬やパパのことも思い浮かべた。こんな時は、友達より家族のことばかり考えている。特に燿馬のことを思うだけで、力が沸いてくる。  早く燿馬の腕に抱かれて、何もかも忘れて眠りたい。それまでは、何があっても立ち止まらない。自分にそう言い聞かせながら、頼もしい二人の霊に導かれて私は山道を突き進んだ。
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