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「あなた馴れ馴れしいのよ?ちゃんと教育は受けたの?
相手が嫌がってることをするのは、自己中心的過ぎるってわからない?
もう、いい加減にして!!」
精一杯大声で怒ったら、手で口を塞がれてしまった。
「しっ……。おじい様に聞こえるとマズイ。……場所を変えましょう、夏鈴さん」
私の話など聞こえてないように振舞うから、だんだんと怒り疲れが起きてしまう。話が通じる相手じゃないって、本当に困るし辛い。お手上げだ。
彼は恋人にするように私をぴったりと抱き寄せながら歩き出した。すべてか窮屈な薄暗い廊下を出ると、さっきの四面の空間に戻り左隣のドアを開けてそこに引き込まれた。
同じく長い廊下があって行きついた先は、想像を裏切るほどに大きな空間だった。
小学校の体育館ほどもあるその広い部屋の天井から目の高さにある窓縁までの間に、びっしりと絵画が飾られていた。かなり大きな絵からスケッチブックを額縁に入れたような小さなが額縁の絵まで貼られている。よく見ればそれは、田丸燿平のサインがついた絵だった。
そこにはあの代表作である「忘却」がないのは、箱根のギャラリーBLUESTARにあるから。これだけのコレクションがあるなら、喉から手が出るほど「忘却」を欲しがっているに違いない。
「BLUESTARにはもう行かれたんでしたよね?」
唐突に質問されて、私は返事に困った。
いちいちどうして知っているのかかなり気になってくる。
「ふふっ。そろそろ僕のことを話しましょう。どうです?紅茶はお好きですか?」
広い部屋のど真ん中に設置された上品な応接セットで、用意されていたティーポットにケトルからお湯を注ぐ男は、視線を時々私に投げてくる。
「逃げようとしても無駄ですよ。恵鈴さんの逃亡は油断しましたが、そのおかげで二度と同じ過ちは繰り返しません。僕たちは常に学習し、前を見て進歩していますからね」
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