第二章 手繰り寄せられて

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「本家と言っても、今はおじい様と僕しかいません。あとは、波戸崎家の力を欲しいがままに利用している教団とその幹部たちがいます。野々花さんが知っている頃よりも随分と規模が小さくなりましたが、ビッグスポンサーがいるのでこうして山奥ではあるけれど何不自由のない暮らしを送れています」  彼は人懐っこい笑みを浮かべた。 「遅れましたが、僕は波戸崎 (りゅう)です。男女で受け継ぐ能力が違うって知ってます?」 「その前に、あなた年齢は?」  さっきからずっと気になっていた。どう見ても、二十歳そこそこにしか……。 「僕は二十七歳です」 「嘘……」 「本当ですよ。あとで免許証見せても良いですよ。若く見られますが、これでも成人して七年は生きてますから、安心してくださいね」  ……驚きと言うよりも、呆れてしまう。  初めて出会う親戚がこんな人だなんて。 「あなたは四十一歳。十八歳で結婚して、二十二歳で双子のお子さんを産んだ…。その割にあなただって三十歳ぐらいにしか見えません。僕らの血は不老なんです」  どう相槌を打てば良いのかわからないまま、私はついため息をついた。 「……もっと普通に会うことだって出来た筈よ。こんな手の込んだことまでして、何を考えてるの?話がしたいなら、普通に連絡してくれたら良いじゃない」 「果たして、普通に連絡してあなたは取り合ってくれたでしょうか?」  龍は足を組んで、上品な姿勢を崩さずに紅茶を飲み進んでいる。何が入っていてもおかしくない気がして、私は喉が渇いているけれど紅茶を飲むのは控えることに決めていた。
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