第1章

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「パパ、待った。」立ち込む湯気の中で那奈が湯船に浸かる一樹に言った。「ああ、寒いな那奈。」気の抜けた声で一樹が那奈に訊いた。「寒いよ、寒い。」シャワーを浴びながら那奈が答えた。「クリスマス・イブだな。」一樹が呟くように言う。中々洗い終わらない那奈。「うん、ママがケーキ買って来た。」  「あたしも入る。」那奈が湯船に足を浸ける。一樹が体を縮めた。お風呂に二人、暫く黙り込んだ。 「まだ入れてなかった。」一樹が沈黙を破る。窓の傍に置いてある入浴剤を一樹が手にした。「ラベンダーの香り。」一樹が入浴剤のシールを見て言った。 「那奈、学校は楽しい。」お風呂の中に入った入浴剤を掻き混ぜながら一樹が那奈に訊いた。「もう冬休みだよ。」那奈も入浴剤を掻き混ぜている。「あ、そうか。」 「楽しいよ、皆と仲良いし。」那奈が笑った。 「そう、仲良いんだ。」一樹が那奈を見ながら言った。 「そう仲良い皆と。」那奈が繰り返した。 「嫌なことない。」 「別にない。」 それからまた二人は黙り込んだ。ラベンダーの香りが立ち込む。 「那奈は将来何になりたいの。」沈黙が嫌なように一樹が那奈に訊いた。 「え、保育園の先生。」 「19、20上がろうか。」声を合わせて湯船に浸かった二人が言った。 二人が仲良く脱衣所から出る。 パジャマを着た一樹と那奈、茶の間のテーブルには明子の美味しそうな料理が並んでいた。 「あなたからメリークリスマス、私からメリークリスマス、サンタクロース イズ カミング トゥ タウン。」那奈と一樹が声を合わせて歌う。           第二章  病
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