4.あくむ

3/3
前へ
/17ページ
次へ
 その頃はどうしてそんな怖い夢を、繰り返し見るのかわからなった。でもそれから30年ほど経って──  大人になった私は体を壊して一週間ほど入院した。ある夜トイレに行った。病室にはトイレがなかったので廊下の先まで行くしかなかった。夜中病院の廊下は薄暗く、トイレまではいささか不気味だ。だが、私は不気味に感じないのだ。  そしてトイレの前で思った──「懐かしい」  それは不思議な感覚だった。  それまで一度も入院した事など無いのになんで懐かしい?  加えて別の思いも襲ってきた、私は病院で──  し・ん・だ──事がある。  そしてあの恐ろしい野犬の夢を思い出した。  子どもは前世の記憶を覚えているというが、どうも私は前世で野犬に襲われて入院したのち、病院で息を引き取ったらしい、そんな事を心の奥底から思いだした。  今も忘れない嘘のような本当の・お・は・な・し──
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加