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小学四年生くらいの頃、北海道に住んでいて、家の裏にあった広大な森のなかに中ぐらいの大きさの池があった。
私は、友だちと毎日のようにその池で釣りをしていたのだが、遅く帰ると怒られるので、キチンと5:00には家に帰りつけるようにその池を出るようにしていた。もちろん腕時計はつけている。
──移動手段は自転車だ。
セミドロップハンドル自転車なんて知ってる人います? ──中途半端な曲がりのドロップハンドルに座席の前のフレームに仰々しい変速機がついてるやつ。ブレーキランプやウィンカー付きなんて種類もあったけど──知っている人は相当なおじさん、もしくは淑女です。
その日はみんな釣れなかった、だから時間が経つのも忘れてやっきになっていた。いつもだってメダカに毛が生えたような稚魚か、たまーに10センチくらいの鮒がかかるぐらいなので、そうやっきになる事もなかったなぁと今になって思うが、その頃は友だちと競い合ったり、どんな魚だろうと釣れた達成感が嬉しかったものだから、夢中になっていた。
気がつくとあたりは真っ暗だった。
腕時計を見ると6:00はとうに過ぎていた。
「やべぇ」
「帰らなきゃ」
「母ちゃんに怒られる!」
その日は三人で来ていたが、口々にそういうと、釣り道具を片付け、セミドロップハンドルの荷台に括りつけると、一列になり颯爽とこぎ出した。
来る時と同じ遊歩道に入っていった。
池は遊歩道が四つ合流した中心にあったが、どの道も、大人が三人どうにか並べるくらいの幅の土の道だ。
それに出口までには何箇所か分岐していたから入り口を間違えると大変だ。もちろん木でできた案内板が設置されていたが、遊歩道の周りを覆う鬱蒼とした木々は月明かりすら遮り真っ暗だ。
セミドロップハンドル自転車は妙な体制で運転するので、オフロードには全く向いてない。
土を覆った砂利や木の枝につまずき体制を崩しながらも、頼りない自転車のライトをつけてひた走る。
誰もが必死だった。
ライトの届かない先には本当の闇がある。それだけではなく四方八方闇だらけだ。それに夜行性の動物の鳴き声が聴こえてきたり、突然木々が騒ついたり、小動物がライトの光に目を光らせて道を横切ったり、子どもにとっては肝試しやそれ以上の恐怖を感じていた。
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