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──と思ったら、出口が見えてきた、よーし!
出口に向かって更に速度をあげてゴールイン! と思いきや、そこは池だった。どこかで分岐を間違えて戻ってしまった。
「げーーーー」
再び来た道を戻る。
みんな必死で遊歩道を進む、進む、なんだか分からない、どこをどう走っているか分からない。
ただひたすらセミドロップハンドルにしがみつき、よろよろ不安定ながら必死にペダルを回す、回す、回す…回す回す回す回す回す…。
「母ちゃんに怒られる」
それだけを考えて、泣きそうだ。と、先頭を走っていた一人が落ちてる枝に引っかかって転んだ。
ずざざざ…。
すんでのところで私ともう一人も止まった。
発電式の自転車ライトは止まると消える。
三人は真っ暗闇の中に取り残された感覚を全身で味わう。
不安と恐怖はピークに達した。と、その時、ホーホー…フクロウかミミズクの鳴き声が何重にも聴こえてきた。
「ひええええ…」
転んだ友だちも痛みなんてなんのその、我に返って自転車を起こすと一目散にこぎ出した。私たちも我に返って必死にペダルを回す。
「もう嫌だ、母ちゃんに怒られる」
半ベソで、ペダルを回す、回す、回す…回す回す回す回す回す…。と、その時、遊歩道の先が白く光っていた。
「あ、出口だ」
誰もがそう思って光を目指して自転車を走らせるが、ちっとも光は近づかない。
進んでも、進んでも、近づかない。でも、光に向かって進むしかない、何故だかそう思った。
どれくらい走っただろう、ようやく出口が見えてきた、月明りが住宅街の外れを照らしている。それとともに光は消えた。
「やったー助かった」
三台は本当の出口に飛び出た、間違いないそこは池じゃない。
そして自転車を止めた。
三人が安堵して顔を見合わせていると、何かの気配がした。
振り返る。
そこには、白装束のおばあちゃんが笑顔で立っていた。
そして、真っ暗な遊歩道にゆっくり歩いて行くと暗闇に──
き・え・て・い・っ・た
私は咄嗟に思った──主だ森のヌシだ。助けてくれたんだ。
今も忘れない嘘のような本当の・お・は・な・し──
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