2.ふき

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 夢中になっていると、池から上げた糸が、枝にひっかかり、釣針がフキの隙間に落ちた。 「あーあ、やっちゃた」と、釣針を探そうとした時、フキの葉っぱの上に乗っている棒ウキが動いた。  なんだ、なんだ…  私は棒ウキが乗っているフキのそばまでくると、葉っぱをめくってみた。  何もいない。  と、今度は隣の葉っぱが動いた。  隣の葉っぱをめくる、何もいない。  リスが逃げたかなと思い、フキの群生を見ていると、あちこちで葉っぱが不規則に動いている。  ──ざわざわざわ…  なんだこれ?  そのうち背筋を、ぞぞぞぞーっと正体不明の不快感が襲い背筋が伸びた。  …ざわざわ…ぞぞぞぞ…  …ざわざわ…ぞぞぞぞ… 「ああ、早く帰らなきゃ」──そんな思いが頭をかすめた。  そして、私はとっさに空をみた。  まだまだ明るい青空だ。  そして再びフキの葉の群生をみるとざわつきはおさまっていた。 「明るいし、まだいいや」──小学四年男子なんてそんなものである。ざわついた事などすっかり忘れて、釣針を探し当てると仕掛けを枝から外し、再び釣りを始めた。  腕時計の存在すら忘れて…。  その後、夜の森大冒険の末、必死に生還した息子は母に怒られた怒られた。 「遅い!心配するだろ、約束守れないならもう釣りに行かせないぞ」──携帯電話なんて無かった頃だ。  その後一人で風呂に入り、湯船に浸かると気がついた。  あーーーもしかしてフキの下にいたのコロポックルだ。  コロポックルが帰る時間を気にして──  お・し・え・て・く・れ・た  今になって思う、あの時コロポックルの忠告を聞いていたら、一回だけ怒られる回数が減ってたなぁ…思い出す度に、にやけてしまう。  今も忘れない嘘のような本当の・お・は・な・し──
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