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夢中になっていると、池から上げた糸が、枝にひっかかり、釣針がフキの隙間に落ちた。
「あーあ、やっちゃた」と、釣針を探そうとした時、フキの葉っぱの上に乗っている棒ウキが動いた。
なんだ、なんだ…
私は棒ウキが乗っているフキのそばまでくると、葉っぱをめくってみた。
何もいない。
と、今度は隣の葉っぱが動いた。
隣の葉っぱをめくる、何もいない。
リスが逃げたかなと思い、フキの群生を見ていると、あちこちで葉っぱが不規則に動いている。
──ざわざわざわ…
なんだこれ?
そのうち背筋を、ぞぞぞぞーっと正体不明の不快感が襲い背筋が伸びた。
…ざわざわ…ぞぞぞぞ…
…ざわざわ…ぞぞぞぞ…
「ああ、早く帰らなきゃ」──そんな思いが頭をかすめた。
そして、私はとっさに空をみた。
まだまだ明るい青空だ。
そして再びフキの葉の群生をみるとざわつきはおさまっていた。
「明るいし、まだいいや」──小学四年男子なんてそんなものである。ざわついた事などすっかり忘れて、釣針を探し当てると仕掛けを枝から外し、再び釣りを始めた。
腕時計の存在すら忘れて…。
その後、夜の森大冒険の末、必死に生還した息子は母に怒られた怒られた。
「遅い!心配するだろ、約束守れないならもう釣りに行かせないぞ」──携帯電話なんて無かった頃だ。
その後一人で風呂に入り、湯船に浸かると気がついた。
あーーーもしかしてフキの下にいたのコロポックルだ。
コロポックルが帰る時間を気にして──
お・し・え・て・く・れ・た
今になって思う、あの時コロポックルの忠告を聞いていたら、一回だけ怒られる回数が減ってたなぁ…思い出す度に、にやけてしまう。
今も忘れない嘘のような本当の・お・は・な・し──
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