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さて、楽しみだぜ。新しい世界カモンベイベー! 俺はパワー任せにリアを左右に振らしながら発進させる。コーナー手前でステアリングをインに切って、クラッチを踏み、アクセルを吹かしながらクラッチを繋ぐ、リアタイヤが滑り出したらすかさずカウンターを当てる。
楽しい! やっぱり、ドリフトって良いなあ。次のS字は繋げてみるか。ヘッドライトをハイビームにすると、ローブを着て羊の角を被った、いかにも魔王って感じの魔王が道の真ん中に突っ立っていた。ちょっと挨拶代わりにドリフトを魅せ付けてやるか。避けろよ? コスプレーヤー!
俺はコーナーに入る40メートル手前辺りでサイドブレーキをチョンチョンと引き、カウンターを当て、コーナーに突入する。避けない!? このコスプレーヤーは酔ってんのか!? ブレーキをっ……。
次の瞬間、ガッシャーン!
「ぐあああ! こんな奴に殺られるとは!」
「跳ねちまった…………どうしよう」
――よく考えろ! 相手は酔っ払い。どう言い訳すれば良い!? とりあえず、車を停める。
「そこまでだ!」
何!? リアシートに誰か隠れてた。女……? 首筋に冷たい物が当たる。刃物かな?
「ちょっとタンマ、相手は酔っ払いだ」
「何を言ってるの? お手柄よ」
人を跳ねてお手柄とは……イカれた国だ。
「アナタ、志願兵ね。名前は?」
「南木曽だ、ソウって呼んで。とりあえず、そのナイフを収めてよ」
「あっ、これは悪かったわね」
女はナイフを仕舞う。
「君の名前は?」
「私を知らないで戦ってたの!? この魔法車を運転したの!?」
有名人かな? アイドルだったりして、可愛いし。……それにしても魔法車って何だよ!?
「俺は神様に愛されし、過去からやって来た英雄だ」
「フフフ、なにそれ。私はプリンセス・ゼニアよ」
「プリンセス? お姫様?」
「はぁ~、何も知らないで運転してたのね。まあ、下級兵なら仕方ないかしら」
「ところで跳ねちゃった奴はどうすればいい?」
「魔王、テオブロにとどめを刺したのね」
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