第1章

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 豪一郎は、ゆっくりとソファーに座って隣に加奈子も座らせて、その、白い便箋に書かれた文章を、加奈子にも聞こえるように、声に出して読み始めた。 この子を、拾ってくださった方へ…… 私は、現在高校二年生の女性です。一年半前に街でナンパされた男性と、気が付いたら直ぐに身体の関係を持ってしまいました。この子は、多分、その時に出来た赤ちゃんです。 初めて、私の身体に新しい命が宿った事を、知ってしまった時、正直、「すぐに中絶しよう……」そう思いました。それが、この子の……可哀そうだけど、宿命だったんだ、と。  最初に相談したのは、その当時付き合っていた彼氏でした。 「う、産めよ!!だって、俺と、お前の子供だぞ!!」  彼は、私が犯した過ちを知りませんでした。 「俺は、高校辞めて、一生懸命働く!!お前と赤ちゃんを、一生かけて守る!!」  彼の言葉に、私は、ただただ、泣きじゃくっているだけでした。  本当に、この子が彼の子供だったら、良かった……  私は、この子を産むことにしました。  だけど、出産後、お医者さんに呼び出された時、嫌な予感がしました。 「あなたに頼まれた通り、出生前に行ったDNA鑑定の結果が出ました。酷な言い方になるけど、あの子は、あなたの子ではあっても、彼の子供では、ないです」 「やっぱり……そうですか……」  何となく分かっていました。彼とは、いつもゴムをつけて行為をしていたので…… 事実を彼に伝えると、彼は、激怒して、私の身体を殴る蹴るの暴行に走って、最後に、こう言いました。 「この、阿婆(あば)擦(ず)れのメス豚がっ!!」  そう言い放った彼は、二人で暮らしていたアパートを飛び出して行ってしまいました 私には、この子を育てる意味も、資格もありません。 勝手なのは、承知の上ですが、この子を、よろしくお願いいたします。  私は、母親失格です…… 手紙を読み終えた、豪一郎と加奈子は、しばらく顔を見合わせたままだった。  豪一郎と加奈子が、赤ちゃんが寝ている大きな籠(かご)に近づいて、そっと、寝顔を見に行くと、赤ちゃんは、まだ自分の身に何が起こっているのか?何も分からずにスヤスヤと静かに眠っていた。 「加奈子、養育(よういく)里親(さとおや)研修(けんしゅう)。二人で、受けよう……」  豪一郎が、全てを決断したように、そう言った。 「……はい」  加奈子も、豪一郎の言葉に素直に頷いた。
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