第1章

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 私は、神に見捨てられた。   21歳で、精神疾患の1つである「双極性障害」つまり、躁鬱病(そううつびょう)を患った。抗うつ剤や、炭酸リチウム、各種安定剤が、主治医によって大量に処方された。50㎏台だった痩せ過ぎの体重は、前述の向精神薬の副作用によって、脳の中の食欲中枢を刺激されて、恐怖すら感じる過食症に陥った。結果的に数ヶ月で30㎏以上。体重はみるみるうちに、85㎏にまで増加した。  こうして、そこまで順風満帆に見えた私の人生は、精神疾患つまり「メンヘラ」という錆びついた重い十字架を背負いながら生きていかねばならなくなった。メンヘラにとって厄介なことが幾つかある。周囲のメンヘラ―達を、丁寧に観察したところ、大体の共通点は、仕事が出来ない、或いは、就いても続かない。異性関係がほぼ全滅する。当然友人も居なくなる。薬によって無理矢理気力を持ち上げられているので、キレやすい。善悪の判断がつかなくなり、万引きなどの軽犯罪を繰り返す。暴力的になる。歯も磨かない。風呂も入らない。髭も剃らない。どうしようもない事だ…… 「10年以上、薬物療法で治らない、改善の余地が見られない精神疾患患者の多くは、先天性の発達障害の可能性が高いです」  最近になって主治医に、こんな台詞を何回も聞かされた。発達障害?先天性?治らないって事ですか? 「近年、発達障害に特化した新薬が、使えるようになりました。この新薬を服用すれば、全てうまくいきます。是非、服用する事を、オススメします」 「ホントかよ!?ところでその新薬ってのは、どういった類の薬なんだ?」  敢えて、心の中でそう呟いた私は、その時少しだけ持っちゃいけない希望っていうやつを抱いていたのかも知れない。 「コンサータ」という、その薬の正体は、なんの事はない、かつて精神科で処方されていた保険適用格安覚醒剤「リタリン」と同じ成分「塩酸メチルフェニデート」だった。その時は、私もしつこい主治医のススメを頑なに拒んでいたが、徐々にそのコンサータの魔力に惹きつけられるようになってしまっていた。
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