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「…さあ」
「わかった!泣いちゃった自分に絶望してるんでしょ」
「なっ、そんなことないよ」
「ははっ、だよな」
二人は桜を見上げた。しばらくこのままでいたが、くーが、さーちゃんに話しかけた。
「ねぇさーちゃん、私と幸せにならない?」さーちゃんは、
「そうだね」と言ってまた図上の桜に目を向けた。
やっぱりさーちゃんは鈍感だ。くーは心の中でそう思った。
これがさーちゃんなりの幸せなのだろうか、さーちゃんが笑った。くーもつられて笑った。
周囲に二つの笑い声が響いた。絶望を受け入れた二人の笑いが。
眩い光が二人を包んだ気がした。
さーちゃんはあえてくーを待っていた。二人で一緒にみーちゃんに会う為に。三人一緒の生活が、久しぶりに出来る、そう思うと居ても立ってもいられなくなる。
やっと、みーちゃんと近くなれる。くーは、さーちゃんのほっぺにキスをしながらそんなことを考えていた。
その日の地方紙に、坂井来海死刑囚の刑執行が二面に載った。また、彼女の友人である久保智が自殺したと、書かれていた。「友人を追っての殉死か」とも言われている。
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