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軽音楽部にいた間、そんな苦行とも言いたくなる出来事が度々あった。何かか起こる度に、先輩の言うことは絶対だとか、伝統という言葉に守られた大きな圧力に逆らうことのできない自分に嫌気がした。そして他の同期新入部員達が少しずつその環境に順応できていくのに、それができない自分にも腹が立った。それでも二年間軽音楽部を辞めなかったのは、伸介が音楽好きであり、ロックスターへの憧れを捨てることができなかったからだろう。学校と言う狭い社会しか知らなかった彼にとって、あまりにも選べる選択肢が少なかったのだ。
「死ね」
と誰にも聞こえない声で再び呟いてから、伸介は午後の授業をサボり大学を後にした。
「東京は狂った街か……」
帰り道、SADSの1stシングル「TOKYO」のワンフレーズを思い出し、伸介は幾分狭い灰色の空をぼんやりと眺め、ため息をついた。
お読みいただきましてありがとうございました。
続きは書籍にてご覧くださいませ。
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