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ところで、その簡易な地図には、現在位置と目的地に星印がついていた。目的地とは駅のことだとすっかり思い込んでいたが、もしかして違うのかとも思い始めていた。それほどこの回り道に長い時間いるような気がしてきたのだった。
また時計を見れば、まだ時間は0時10分だったので、それは気のせいだとわかった。
「ちょっとまてよ、おいさっきからこの時計」
耳を近づけてみればそのアナログ時計からは動く音が何かしらすると思ったが、どうやら針どころか中のネジも動いていないようだった。
「うそだろ、こんな時に」
ひとしきり落胆し終えた後、嘆いても仕方がないし、今夜はどこかで夜を明かすか、タクシーで帰るしかないなと腹を決めると、さっきまでの焦りは嘘のように引いていった。
しかし、どちらにしてもこの回り道を抜けて大通りに出なければいけないのだ。
とりあえず来た道を戻ったほうが早いかもしれないと、道なりに進んでいったが、いつまでたっても元の道にはたどり着けない。
きっと途中で道を間違えたんだと思いたかったが、行くときも戻るときも道はただ一つだけだった。
さすがに不気味に思えてきて、私はすぐに終わるはずだと、この事態を楽観的に捉えることにして足を先に進めた。そうしなければ、もう私の精神は持ちそうもないほど疲弊していた。
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