理性と欲望の天秤

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 二人は戸惑いの色を隠せずに有羽を見つめる。視線の先にいるその人は、寂しそうな笑顔を浮かべて口を開いた。 「ケンカはやめよ?ごめんね、私が泊まるなんて言ったからだね」 「……有羽のせいじゃないよ」 「ありがと。でも今日は里紗の部屋に泊まらせて?家にもう電話しちゃったし、ケンカ別れってちょっとヤだから」  ばつが悪そうにして、各々頷く二人。有羽はにっこりと笑って里紗の手を引く。 「またゲームしよう!私、アクションがいいなぁ。ちょっと派手なの」 「うん……」 「あ、兄ちゃん、テーブルの上、あとで里紗と一緒に片付けるから。ごちそう様でした」  そして里紗を先に部屋へ向かわせ、リビングを出る──その直前に有羽は半身だけ振り返り、小さく笑って声をかけた。 「ごめんね」  どうして有羽が謝るのか?何に対して謝ったのか?また、どうして彼女を誤解させたままにしてしまったのか、そして彼女を傷つけてしまった自分の不甲斐なさ。  智孝は顔を歪めて、テーブルに両腕を押し付ける。悔しさが立ち込める。その怒りを吐き出すように、智孝は低く己を罵倒した。
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