初めてのヒトツ(R18)

4/19
前へ
/40ページ
次へ
 パサ、と床の上に布が落とされる。その瞬間目を開けたくなったが、彼女の言葉を思い出し、ぐっと堪える──と、そんな智孝の苦労も無駄に終わり、突然鳴り響いた携帯の着信音に驚き、視界が(ひら)けた。 「あ」  同時に同じ言葉を発し見つめ合う二人。有羽は咄嗟に胸を隠し言葉をぶつける。 「見た?」 「見えなかった」  正直に、悔しい気持ちも込め、智孝が答える間にも着信音は流れる。有羽に出ることを勧められ、智孝は毒づくような気持ちで携帯を手に取った。画面には妹の名前が表示されていて、さらに舌打ちしたくなる気分だ。 「何だよ」 「怖っ。第一声がそれ?まだ怒ってるの?」 「怒ってなかったけど、用は何だ?」  いつもと違う兄の様子を察したのか、里紗は遠慮がちに問いかける。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加