理性と欲望の天秤

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 それは三人で食卓を囲んだ時も同じで、明らかな動揺が智孝にも有羽にも表れている。「ご飯がおいしい」とか「今日は寒かったね」とか、どうでもいい会話が交わされたかと思うと長い沈黙が訪れたりもする。  そんな中、先手を切ったのは里紗である。 「ねえ、私がお邪魔だったら、外に出てくけど?」  事情を知っている人のこの発言は、智孝と有羽を赤面させるには充分だった。有羽はそれにプラス、手を左右に勢いよく振っている。 「いや、そんな必要ないから!っていうより、里紗がいないと困るし」 「なんで?人が居る方がしにくくない?」 「何を考えてるだ、お前は。人がいてもいなくても、何もしないぞ俺は」 「ちょっと、お兄ちゃん!それ、女の子には禁句よ」  呆れた様子の智孝に、里紗が怒ったように反論する。机についた両手がその怒りを象徴しているようだ。
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