理性と欲望の天秤

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「何のアプローチもないと、女の子は自分に魅力がないからだって思っちゃうの」 「いいよ、里紗。私に魅力ないのは本当だし」 「そんなことはない」と、智孝がフォローを入れる前に里紗がその役をとってしまった。有羽の腕を軽く掴み、真剣な眼差しを向ける。 「有羽は魅力的よ。内面も体も」 「……最後はいらないから」  里紗の発言に、赤くなって俯く有羽の体についつい視線がいってしまう智孝。まだ見たことのない服の中身に、智孝はごくりと唾を呑み込んだ。 「でも、真面目な話、うかうかしてると本当に誰かにとられちゃうわよ、お兄ちゃん」  声のトーンが変わり、智孝も先程とは違った目を向ける。里紗はそこから理由を聞いているのだと思い、口を開く。 「同じクラスの男子で有羽のこと狙ってそうな奴がいるのよ。そいつにお兄ちゃんとのことを言ったら、なんて返ってきたと思う?伊藤の兄貴じゃ、大したことなさそうって言ったのよ!」 「それは、お前の人格が問題じゃないのか?」 「その後の有羽が必死でお兄ちゃんを庇うあの姿……けなげでかわいくて、私が彼氏だったらその場で押し倒してたわよ!」 「よかったな、有羽。彼氏が里紗じゃなくて」  暖簾のれんに腕押し。里紗はさらっと問題点を摩り替える兄に怒りを覚えた。
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