203人が本棚に入れています
本棚に追加
「何のアプローチもないと、女の子は自分に魅力がないからだって思っちゃうの」
「いいよ、里紗。私に魅力ないのは本当だし」
「そんなことはない」と、智孝がフォローを入れる前に里紗がその役をとってしまった。有羽の腕を軽く掴み、真剣な眼差しを向ける。
「有羽は魅力的よ。内面も体も」
「……最後はいらないから」
里紗の発言に、赤くなって俯く有羽の体についつい視線がいってしまう智孝。まだ見たことのない服の中身に、智孝はごくりと唾を呑み込んだ。
「でも、真面目な話、うかうかしてると本当に誰かにとられちゃうわよ、お兄ちゃん」
声のトーンが変わり、智孝も先程とは違った目を向ける。里紗はそこから理由を聞いているのだと思い、口を開く。
「同じクラスの男子で有羽のこと狙ってそうな奴がいるのよ。そいつにお兄ちゃんとのことを言ったら、なんて返ってきたと思う?伊藤の兄貴じゃ、大したことなさそうって言ったのよ!」
「それは、お前の人格が問題じゃないのか?」
「その後の有羽が必死でお兄ちゃんを庇うあの姿……けなげでかわいくて、私が彼氏だったらその場で押し倒してたわよ!」
「よかったな、有羽。彼氏が里紗じゃなくて」
暖簾のれんに腕押し。里紗はさらっと問題点を摩り替える兄に怒りを覚えた。
最初のコメントを投稿しよう!