理性と欲望の天秤

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「有羽、今さらだけど、お兄ちゃんのどこがいいの?」 「兄ちゃんは優しいよ。なんだかんだ言っても私のわがままに付き合ってくれるし、私が悩んでたら相談にのってくれるし、そのアドバイスも的確だし。一緒にいると楽しくて安心できる、頼もしい人だもん」  照れ笑いを浮かべてそう答える有羽に、智孝は結構な感動を受けていた。抱きしめたい気分にかられるが、位置的にも状況的にもそれは許されず。 「有羽!私にのりかえなさい!」 と、里紗が代わって抱きついた。智孝は我が妹ながら頭の痛い奴だと呆れ、有羽はけらけらと笑うだけである。  未だ有羽に抱きついたまま里紗はふいに顔に陰りを見せる。 「私もさ、自分のお兄ちゃんだから悪く言いたくなかったけど……そいつが言ってたように、お兄ちゃんて大した人じゃないのかもね」 「里紗?」 「だってそうでしょ?有羽を不安にさせてばっかりで。いいじゃない、何が問題なのよ?彼女はOKって言ってるのに!結局お兄ちゃん、意気地がないのよ!」  今までの相談で有羽の気持ちに共感していた里紗は、怒りをぶつけるように智孝を睨む。智孝もこれにはむっとした様子を見せ、反論し始めた。
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