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1.悩みのたね
美味しい白ワインと絶品の料理に囲まれて、わたしは26歳を迎えた。
SNSにはたくさんのおめでとうが並んでいる。花束にケーキ、クラッカーの絵文字やスタンプが盛大にお祝いしてくれていた。
ほろ酔いの中、同期のえびちゃんをはじめ、皆と笑うだけ笑った。囲むテーブルに男はいない。それでも楽しい誕生日だった。
「千佳、誕生日おめでとうだったね」
「千佳、じゃあまた明日ねー」
「やっぱり千佳と飲むとおもしろい。また飲もうね」
時刻は21時40分。
わたしこと葛城千佳の26歳誕生日会という宴は絶妙な時間帯に閉幕した。
二次会、別の店、というキーワードは一切出てこなかった。
そう。
この宴に集まってくれた愛しき職場の仲間たちには、すべて彼氏という愛しき存在がいるのであった。皆、本当に楽しく過ごしながら祝ってくれたが、『遅くとも22時には彼氏の待つ家へ帰りたい』という、オーラと呼ぶべきか鉄のように硬い空気も同時に漂わせてくれていたのである。
ということで、26歳なりたてほやほやのわたしは今、茎ワカメを噛みながら家でテレビを観ている。
26歳初日は茎ワカメとともに終わりを告げようとしている。
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