4月6日{日}

3/5
前へ
/120ページ
次へ
少しだけ進むと、 小さな駅には不釣り合いな程、 大きな桜の木があった。 その桜の木の側に、 一匹のゴールデンレトリバーが座っている。 犬の隣には、 中学生くらいの女の子がいる。 女の子はこちらを向き、近づいてきた。 「……この手紙、あなたの?」 『あ…、うん。ありがと。』 すると女の子は首を振った。 「私じゃかくて、グリュに。」 『……え?』 「拾ったの、私じゃなくて、グリュだから…」 『あ、う、うん…。ありがと。』 グリュ…とは、この犬のことだろうか。 私の言葉を理解したかのように、 グリュという犬は尻尾を振った。 「…この辺、人通り少ないから気をつけて。 風で飛ばされたりしたら、ほとんどはもう手元に戻ってこないから。」 『…あ、うん…。』 女の子と犬は行ってしまった。 (何というか、不思議な子だなあ…あの犬…)
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加