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「情けない声」 「やめて愛海さん俺ムスカになる……」 「文句なら太陽に言ってよね」  少しずつ光に慣れて来た目が、すぐそこに立つ彼女を認識し始めた。小麦色に灼けた健康的な脚を惜しげなく晒す水色のショートパンツ。白のタンクトップ。潮焼けして表面が金茶に透けるロングヘア。  俺を見下ろしてにかっと笑うと白い歯が覗く。 「なんか夢でも見てた?」  ほんの少し前のことなのに儚いもので、もう殆ど薄れかけていた。光景も、感覚も、声も。 「……多分」  多分っつーか、完全に夢だけど。 「っていうか来たの!」 「……なんだよ。来たって何が」 「凪!もー、ベッタベタの凪!台風来てから全っ然落ち着かなかったけどやーっとベタ凪!」  愛海の言った『ベタ凪』という言葉がトリガーになって、ぼけていた頭が一気に覚醒した。 「マジ?」 「マジ」 「起きる。朝飯は?」 「作った。早く食べて行こう?私準備してる」  ビーサンをペタペタと鳴らして軽やかに出て行こうとするその背に「真洋(マヒロ)に連絡は?」と尋ねる。が、愛海は足も止めず、廊下から「しといてー!」と返ってくる。
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