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しょうがない。充電ケーブルに繋がるスマホを外して飛び跳ねるように部屋を出た。メッセージを開いてただひと言、『潜る』とだけ送ってダイニングに入れば、テーブルの上に大きめのおにぎりと目玉焼きと焼いたウインナーが盛られたひと皿とコップ一杯のオレンジジュースが目に入る。
ありがたいことだ。蛋白質と炭水化物にビタミン。食べ合わせ飲み合わせなど関係ない。身体のエサみたいなメニューでも、食べて行かないと二人ともくたくたで鉛みたいになって身体が言うことを聞かなくなる。
ウインナーを口に放り入れるとスマホが震え出した。真洋からだ。
「はいよ」
もごもごとしながらスピーカーにして取り敢えず出る。
「あれ、飯の最中か」
「そうだよ。起きたのついさっきでさぁ」
「やっと凪いだなー。客がいなきゃ俺も行きたいんだけど残念だよ」
「真洋の分も楽しんでくるから安心しろって」
おにぎりに手を伸ばして三角の頂点にかぶり付き、飲むようにして胃に入れた。わかめご飯のちょうどいい塩分が身体に染み渡る。
「浜からだな。なんかあったら連絡するんだぞ」
「わかってるよ」
「愛海は?」
「もう準備してる。あいつ朝っぱらから元気過ぎなんだけど。ガキみたい」
「俺からすりゃあ海里も同じようにガキだよ」
「たった2コ上で年上ぶんなっつの。夏生(ナツキ)たちとタメじゃん、何が変わんのー?」
「そうやってムキになってくだんねえ反論とかしなくなるとか?」
ぐっと詰まったのはその言葉が痛かったからか、喉奥に詰め込み過ぎたせいか。なんとか飲み下してフォークを手に取った。
「……どーせガキだよ」
「興奮し過ぎてエア切れ起こすなよ」
「気を付けるから。飯喰わせてよ」
「はいはい。じゃあな」
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