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 笑われながら通話が切れた。漸くまともに食べられる。ちょうどいい半熟の目玉焼きをフォークで切り、口に入れた。  真洋は車で5分ほど行った所にあるダイビングショップ兼ゲストハウス、『リーフエッジ』のオーナーをしていて、愛海と二人で潜る時は連絡するのが決まりになっている。  ひと通り食べ終えジュースも飲み干すと、ダイニングに静寂が訪れた。いつもならその静けさの中耳を澄ませば波の音があるのに、今朝はそれすらない。勢い良く立ち上がり、シンクに食器を置いてスポンジを手にする。同居のルール。『食べただけの奴は洗い物』  既に置かれていた愛海の分も合わせて洗い、Tシャツを脱ぎながら洗面所へ向かった。焦れったく歯磨きをしながらも、頭の中は既に半分以上海に飛び込んでいる。  愛海よりも色の濃い肌の上で揺れる首から提げた銀のドッグタグ。鏡の中で、嵌め込まれたオニキスが太陽に反射して黒光りした。 「……やべ」  あんまり時間を掛けるとバディがうるさい。口をすすぎ、歯ブラシをコップに投げ入れた。からん、と色違いの2本が音を立てる。  そそくさとサーフパンツに着替えて平屋の部屋を突っ切り、庭に向かった。甘辛い潮の匂いが濃くなった。 「おっそい!」  軒下に並べられた用具一式の傍らで、俺のバディはやっぱり仁王立ちで開口一番文句。 「悪ぃ、真洋が電話してきた」  並んだその中から自分の黒いウェットスーツを取り脚を入れる。愛海は既に飾り気ない白のシンプルなビキニの上からウェットを腰まで履いていて、上半分に袖を通そうとしている所だった。
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