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「なんて?」
「俺もいきてーって」
「あー。夏ほどじゃないけどまだ観光客来るもんねぇ」
ワンレングスの長い髪をきつめのポニーテールにして、スーツに巻き込まないようぱさりとひと払い。胸元に揺れるお揃いのドッグタグが太陽に反射してキラキラと光る。嵌っている石は、淡いピンクと白のマーブル模様をしたインカローズ。
ジッパーの中にしまわれて、均整の取れた全身がグレーのそれに覆われた。
「エアは?」
「無味無臭、満タン」
「タンク取り付け任せていい?」
「もちろん。早くウェット着てよ」
「急かすなっての。予備器材と防寒具と水は?」
「さっき運んだ。すっごい頑張ったんだからね」
「ありがとな。ナイフとシグナルフロート」
「BCのポケットの中」
「コンパス」
「そこ並んでる。BCセットしたら付けて」
縁側の上でふたり分のBCと呼ばれるダイビング用のベスト型ジャケットに、愛海が手際よくエアが入ったタンクを括り付けていく。
「マスクの曇り止め」
「もう、愚問!」
「久し振りだから入念にな」
ウェットスーツのジッパーをドッグタグを引っ掛けないように中にしまい込んで上げた。
ひと通りの準備が済んだら動作テストを行う。息が出来なくなったら元も子もない。基本は自分でやるけど、一緒に潜るバディのそれもチェックする。それが命を預け合う責任。
ウェイトを腰に付けマスクは頭、縁側に背を向け同時にしゃがんでBCを身体の前でかちりと止め、着用した。顔を見合わせ、頷き合う。そして「せーの」と勢いを付けて背負い上げるように立ち上がった。
「ああー!久々だからおー!もー!いー!!」
「わーかったから、キリキリ歩け」
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