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「どんどん女子が湧いてきやがる……こいつ、モテるタイプの人間なのか……!」
先日童貞を捨てたとはいえ、童貞ハートを二十年間大事に育ててきた伸介にとって、モテる男はもはや地球外生命体の様な、得体のしれない力を持った恐ろしい存在に思えていた。
そして数分後、ようやく女子の群れが消え、霧が晴れるように瞬の顔が見えた。
「しゅ、瞬くん、今の女子達はいったい……?」
「あー、あれは僕が入ってる文芸サークルの人達なんですよ。なんかこう、めんどくさいんですよねー」
瞬は本当にめんどくさそうにため息をついて、続けた。
「文芸サークルっていっても、つまんない人ばっかですよ。高尾さんや伸介さんと話してる方がよっぽど楽しいし、為になりますよ」
彼はどこか遠い所を見つめるような眼でそう言った。
伸介はその眼の奥にとてつもなく深い井戸のような、ひんやりとじめついた闇の様なものを感じた。
「こいつも俺と同じ様な何かを抱えているのかもしれないな……」
そう思うと、何だか彼の事を少し好きになった様な気がした。女が妙に集まってくるのは癪だが……。
「あーでも本当に今日高尾さんがいないの残念だなー。あ、そうだ! これから伸介さんの家に遊びに行ってもいいですか!」
「ん? 別にいいけど」
「やったー! 午後の授業とか大丈夫ですか?」
「まあ大した授業はないし大丈夫だよ。それと、もう起きてるだろうし高尾も呼ぶ?」
「ぜひ! お願いします!」
と、自分から提案しておいてなんだが、
「まあ自分は高尾のおまけみたいなものか」
という嫉妬の感情が脳裏をよぎって、伸介は自分が少し嫌になった。
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