第一章 ふたたび

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 一人暮らしのマンションに帰り着いたのは夜の十時頃だった。エアコンのスイッチを入れ、梅雨明け間近のじっとりとした暑さがまとわりついたままの体をソファーにもたれさせた。望と隆太のことをぼんやりと考える。長い間、頭の片隅にさえ彼らを思い浮かべることはなかった。さっき彼らと会ったとき、確かに彼らが中学時代の友人であったという思いが浮かんだ。しかし、その頃の彼らの顔や姿、同じ教室で過ごした時間、そういったものが何一つ頭に浮かんでは来ない。そして、彼らは死んだんだという思いだけが、奇妙な現実味を帯びた記憶の断片として頭に刻み込まれていた。  溜息を一つつき、シャワーを浴びようと立ち上がりかけたとき携帯が鳴った。携帯を手に取り液晶を見ると、柚木真梨子の名前が表示されている。 「もしもし」 「森田君? 今よかったかな?」 「ちょうど家に帰ったところだから大丈夫だよ」  森田は話しながら冷蔵庫に行き、缶ビールを取り出した。ソファーに戻り、ビールを喉に流し込む。真梨子の話はいつも通りのとりとめのない世間話だ。人間関係の愚痴や、最近行ったジャズライブの話、海外出張した時の話。
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