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「殿下、ひとつお尋ねしてもよろしいですか?」
「駄目だ! 黙って走れ!」
仁彦が半世紀以上年の離れた老父を振り切れないのには理由があった。
この背の低い、つまり歩幅も狭いこの女、浅間梅子を引き連れていたからである。
仁彦は力いっぱい彼女の腕を引っ張っているが、なかなか進まない。
「殿下、ひとつ聞きますね」
梅子には、急ぐ気がないからである。
「なぜ、あのような老いぼれから逃げ回っているのですか?」
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