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いずみさんの目は泳いでいました。
まだ迷っている様子。しかし外で車のエンジン音がすると、意を決したように珠ちゃんを抱えて、外へ飛び出して行きました。
するとようやく、二人きりが完成します。
ようやくと言ったのは、私はずっと母と二人きりで話がしたいと考えていたからです。
母が突然姿を現してから急にと言う訳ではありません。母が失踪してから、ずっとそう思い抱いていたのです。
ですから、二人きりになった途端に、母が発した第一声には、私は心底失望しました。
「梅子」
「なんでしょう、お母さま」
「もう、あの屁垂れの言う事を聞くのは止めなさい」
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