桜コレクション

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夢を見ているとしか思えない。 その女の子は、日本人形のような髪型をしていた。 今風に言えばショートボブか。 前髪は真横に切りそろえられている。 年齢は僕と同じか少し下くらい。というか年齢不詳だ。見た目は幼げなのだが、彼女の瞳は大人びているというか……。 何よりも目を引くのは、彼女がまとっている衣服だ。 和服である。淡い桃色の生地に桜の花びらの模様が散りばめられていた。 「ようやく目覚めたか」 その声音は幼げだが、口調は大人びている。 「ええっと……誰ですか?」 これが夢の続きだとしても、そう尋ねずにはいられなかった。 「妾のことは吉野と呼ぶがよい」 『吉野』というのは名字だろうか。それとも名前だろうか。 「呼び方はともなく、何者なんですか?」 戸締まりはしていたはずだ。 それなのに、どうやって入ってきたのだろう。 何のためにこんなことをしたのだろう。 「桜の精――とでも思っておけ」 はい。夢決定。 これが夢でなかったら怖すぎる。 変な女の子が僕の部屋へ忍び込んできて、寝ている僕の胸元で正座をしていたのだから。 「お主の力を借りたい。それゆえにこうして忍んでまいった」 「えっ……? 僕の力を……?」 「女との交わりを知らぬ少年にしか頼めぬのだ」 「どうせ僕は童貞ですよ」 「妾に助力してくれたら、『男』にしてやってもよいのだぞ。この妾が相手をしてやるのだ。ありがたく思え」 何と。 この女の子がえっちをさせてくれるというのか。 「悪い話ではあるまい。お主のように風采の上がらぬ男など、この先ずっと女子に縁がなかろう」 そこまで言われるほどでも……あるかもしれない。 「で、僕は何をすればいいんですか?」 危険なことだったら即座に断るつもりだ。 「それは追々話す。あまり時がないのでな」 「いや、待ってくださいよ。まだ引き受けるとは……」 強烈な眠気の見舞われ、僕の意識は途切れた。
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