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 彼女が来なくなって、三年目の四月一日。  雲一つない、青天だった。  僕は、大人と呼ばれる年齢になった。けれど、大人になった自覚なんてなかった。子どものままだった。彼女と初めて出会った中学二年生の時から、僕は何も変わっていない。僕はここに留まり続けている。  名前も知らない、彼女を想う。彼を亡くした寂しさは拭えただろうか。僕は彼女にとって、どんな存在だったのだろうか。答えのない疑問が頭に浮かんでは、消えていく。  やがて、一人の老婦がドームへと入ってきた。  そして、僕の姿を認めるなり、老婦は杖を突きながら慌ただしく駆けよってきた。 「あなた、もしかして、毎年四月一日にここで待ち合わせを……」  息を切らして、涙を浮かべながら、老婦は言う。 「そう、ですけど」 「あ、ああ……」  カランと、老婦の手から杖が離れて、落ちる。  老婦は両手で顔を覆って、嗚咽をもらし始めた。 「ごめんなさい、ごめんなさいね」  事情を飲み込めないまま、僕は頭を下げるおばあさんの背中をさする。  大丈夫ですから、落ち着いて下さい。自分に言い聞かせているみたいだった。 「取り乱してしまって、ごめんなさい」     
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