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『私は、あなたに彼の姿を重ねていました。  それは、その代償行為は、私にとって薬でもあり、毒でもありました。  あなたと話す時間はかけがえのないもので、生きていくために必要な時間であったように思います。けれど、あなたと言葉を交わしていると、どうしても彼の存在が頭をよぎるのです。もし、彼が生きていたら、このようなことを言うだろう。そんな言葉を、あなたは私に返してくれるのです。  でも、私とあなたは違う世界を生きている。  あなたはきっと、学校生活のなかで違う誰かを好きになって、恋をする。  元来、私はイレギュラーな存在で、あなたの世界に干渉してはいけないのです。  だから、一年に一度という(かせ)を、私は自らに科していました。  あなたが、いつか言っていたように。  あの桜と同じように、私も四月一日に花を咲き誇らせていたように思います。  けれど、咲き誇った花は散ってゆく。  私の心も、同じだったのです。  四月一日という日を待ち遠しく思うとともに、その日を迎えるための日々は、地獄と変わらないものでした。それで私はもう、すっかり弱ってしまったのです。  この心と体は、近いうちに枯れ果ててしまう。  だから、あなたにこうして手紙を遺しておこうと思いました。       
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