2人が本棚に入れています
本棚に追加
『私は、あなたに彼の姿を重ねていました。
それは、その代償行為は、私にとって薬でもあり、毒でもありました。
あなたと話す時間はかけがえのないもので、生きていくために必要な時間であったように思います。けれど、あなたと言葉を交わしていると、どうしても彼の存在が頭をよぎるのです。もし、彼が生きていたら、このようなことを言うだろう。そんな言葉を、あなたは私に返してくれるのです。
でも、私とあなたは違う世界を生きている。
あなたはきっと、学校生活のなかで違う誰かを好きになって、恋をする。
元来、私はイレギュラーな存在で、あなたの世界に干渉してはいけないのです。
だから、一年に一度という枷を、私は自らに科していました。
あなたが、いつか言っていたように。
あの桜と同じように、私も四月一日に花を咲き誇らせていたように思います。
けれど、咲き誇った花は散ってゆく。
私の心も、同じだったのです。
四月一日という日を待ち遠しく思うとともに、その日を迎えるための日々は、地獄と変わらないものでした。それで私はもう、すっかり弱ってしまったのです。
この心と体は、近いうちに枯れ果ててしまう。
だから、あなたにこうして手紙を遺しておこうと思いました。
最初のコメントを投稿しよう!