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何も受け止める覚悟もないままに、身勝手な言葉を投げかける。
「……彼が亡くなってから、彼のことが好きだって気が付いたの」
ぽつりと、彼女は言葉を漏らした。
今日の午前に告別式が行われ、幼馴染は荼毘に付されたとのことだった。
「骨だけになった彼を見て、ようやく私は彼が死んだことを認識したの。私はまだ、信じていた。彼の肉体があって、彼が動き出して、笑って、何してるんだって声を発することを期待していた。でも、今日、彼の肉体は灰になった。彼の心の行き場はもう、この世のどこにも存在しなくなってしまった」
その場にいると、どうにかなってしまいそうで、火葬場を飛び出したと彼女は言った。
「それで、花見でもするかって、彼は言っていたのを思い出してね」
「雨宿り、ですか」
「そう。雨宿り」
その雨は、いつになったらやむのだろう。
「四月一日なんて、嫌でも思い出してしまう」
嘆くように、彼女は言う。
「嘘であって欲しいと、願ってしまう」
ああ、この人は。
死んでしまうのだと、思った。
何かで繋ぎ止めておかないと。
すぐに、連れていかれてしまう。
「来年の四月一日、ここに来て下さい」
それは、とっさに口をついて出た言葉だった。
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