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「ありがとう。彼のために手を合わせてくれて」 「いえ、そんな」  ほとんど自己満足みたいなものだった。僕は、彼女の幼馴染のことを何一つ知らない。分かっていることがあるとすれば、それは一年経った今でも、彼女にとって彼の存在が一番であるということだった。 「君って少し、彼に似てるよ」  僕はなんて返したら良いか分からなくて、曖昧に微笑む。  ごめん、と彼女は謝った。 「今のは、聞かなかったことにして」 「じゃあ、違う話をしましょう。僕たちまだ、ほとんど何も知らないんですから」 「うん」  それから僕たちは、他愛もない話をした。彼女は僕よりも五つ年上の十九歳で、今はアルバイトをして生活しているとのことだった。僕は、彼女に学校生活のことを話した。部活はテニスをやっていると伝えると、私もそうだったと彼女はどこか嬉しそうに言うのだった。 「そういえば、知ってるかな」  彼女は、この桜が必ず四月一日に満開になるように制御されていることを教えてくれた。 「この桜は、いったい何を思っているんだろうね」  その問いかけの答えは、分からない。  分からないけれど。 「僕と同じですね」  どういうこと? と彼女は首を傾げた。     
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