警視庁第十九課 『彫刻家殺人事件』

15/37
前へ
/37ページ
次へ
 この日は湊人も、現場を見ることにしたようだ。  アトリエの中にちらばった作品の残骸に、その中心に存在する人型の白いチョーク。  しばらく手を合わせてから、湊人はアトリエの中を調べ始める。 「二人に質問だ。どうして窓が割れているんだ」 「強盗が割った、もしくは家族の誰かが割ったんでしょ」  遊星が即座に返事をして、鑑識の作業に戻る。  その途端に、湊人の携帯電話が鳴る。 「はい、森嶋です。ああ、お前か。……了解した」  短い通話を切り、湊人は遊星たちに報告する。 「昨日下谷が言っていた、不審者の身元が判明したそうだ。その人物は橋本家の隣に住む美大生、野村(のむら)裕司(ゆうじ)。  野村は和雅に、彫刻を習っていたそうだ。何でも、美大での専攻が彫刻らしく、よく橋本家に出入りしていたとのことだ。ただ……」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加