警視庁第十九課 『彫刻家殺人事件』

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 湊人は納得できない、といった表情でボタンを操作する。  次の写真は、通帳と印鑑が仕舞われていた、机の引き出しの中の写真だった。 「荒らされてるなぁ」 「とても慌てとったんやろう、中はぐちゃぐちゃやで」  翔大の言うとおり、その引き出しに入っていた紙類の中には、引き裂かれているものもあった。  湊人はもう一度ボタンを押して、片眉を上げる。  それは机の引き出しの、全体図の写真だった。  引き出しは全部で縦に三つ並んでおり、その中で一番上だけが乱暴に開けられていた。 「これ、事件当時から一切動かしてないはずだよな」 「せやで。現場はちゃんと保存されてる」 「……大体のことは、分かった。あとは、証拠だ」 「湊人、まさか犯人分かったんか」  湊人は俯いて、まだ仮説の段階だ、と言いながらカメラを翔大に返す。
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