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「ちょっと伸びましたよ」
「だよね。伸ばすの?」
「切る時間も無いし、多分そうなると思います」
高槻さんは「ふーん」と、私の髪の間に指を通した。
思わず、ごくりと唾を飲む。
綺麗に結ぶために何度も櫛を通したからつっかかるということはなかった。
「さらさらじゃん」ともう一度指を通す高槻さんに気づかれないようにそっと胸をなで下ろす。
「この調子ならもう少し長くなるまで見れるかな」
「高槻さん、その、長い方が好きなんですか?」
ぱちくりと高槻さんの目が瞬く。
それから「そうだなぁ」と私を見たまま首を捻る。
「マキちゃんは長くても似合うと思うよ」
「……もう、高槻さんの話をしてたのに」
じとりと見上げると、はは、と高槻さんが小さく笑う。
「まぁ、それはどっちでもいいじゃん。それとも心底知りたい?」
「……、」
意地悪。
そういう聞かれ方をされると答えられない。
「それに。言ったら、マキちゃん、その選択肢から外れようとするでしょ。照れ屋だから」
どうだろう。
そう言われなかったら、高槻さんが答えたとおりにしてたと思うんだけど。
でも、それも一理あるかも。……いや、高槻さんしかこの話は知らないんだから、高槻さんの意見を採用したことがこの人にばれても別にいい気がする。
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